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Funakawa ひのめ市/男鹿市船川

2015年8月7日 カテゴリ:イベント, スポット

秋田県男鹿市船川。かつて港町として栄えたこの町には、男鹿市の中心「男鹿駅」や「男鹿市役所」がある。
しかしその人口は減り続け、現在船川地区は7000人に満たない人口。
男鹿駅前は少し寂しい様相となっている。

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そんな男鹿市船川に秋田県各地から多くの人が集まった一日がある。
7月のある晴れた日曜日、今回が初開催となる「ひのめ市」が行われた。

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会場は男鹿駅から徒歩5分ほどのところにある三角広場とそこから坂を上った先にある大龍寺。
「こんなに人が集まるのは、お祭り以外で初めて見た!」
と船川出身の20代女性はひさしぶりの故郷の活気に嬉しそうだった。

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「Funakawaひのめ市」は、男鹿の30~50代の有志が地元に何かできないかと集まり、ミーティングを重ねて企画された。地元船川にふたたび光を当てたい。そんな”地元愛”が柱となっている。

先月行われた第一回目、会場の三角広場に出店したのは、もちろん地元の店やブランド。地元のお母さんたちも出店し、新鮮なサザエや果物野菜が並べられた。さらに、県内外からも出張店や作家が集まった。
第二会場となった大龍寺では、子供たちが楽しめるようなかき氷やポップコーンの手作り体験・ワークショップなどが開かれた。

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開始時間前から人だかりができていたのは、Own GArment productsのブース。
Ownさんは男鹿市船川でオリジナルブランドを立ち上げ運営している服飾ブランド。
縫製の丁寧さと品質の良さに定評があり、以前nanoka/akitaでも取り上げさせていただいた秋田市仁井田のirutocoさんでも取り扱われている。
この日は、過去のサンプル品やB品などがお買い得価格で販売されることや他にもmade in Yamanashiのネクタイ、Keigo Kumagaiさんのシャツの販売もあり「ひのめ市」に合わせて地域の空き店舗を有志でリノベーションした店舗はたくさんの人ですし詰め状態だった。


隣の「福島肉店」にも、おいしいコロッケを求めて長い行列が。
奥の調理場ではフル稼働でフライヤーが稼働していたが、あれよあれよという間にバットの上のコロッケは売れてゆき、午前の部はあっという間に売り切れてしまった。

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実はイベント前日の朝刊に福島さんのコロッケが取り上げられた。
その影響で土曜日にお客様が殺到し仕込んであった商品が空っぽになってしまったとか。
その後、イベントのために寝ずに仕込みをするも、ふたたびイベントには想像以上のお客様が。
あっという間の売り切れとなってしまったそうだ。



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強い日差しの中での開催となったこともあり、アメヤ珈琲店さんのトラックにもおいしいコーヒーを求める列ができていた。

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第二会場となった大龍寺では、ひのめ市の「普段ひのめを見ない人やモノにスポットを当てる」というコンセプト通り、まだ起業していない作り手のブースがあった。
また、ワークショップや子供広場、授乳・おむつ替えスペース、休憩所などが用意されていたこともあり、幼児から小学校高学年までの多くの子供たちによって、普段はかしこまった静かなところというイメージのお寺もこの日は賑わっていた。
子供たちが元気に走り回っていたり、自分たちで試行錯誤しながら手動のかき氷機でかき氷を作ったり、ワークショップで目を輝かせたりする姿が本当に楽しそうで、それを見守る大人も嬉しそうだった。

とにかく実際に行ったこの「ひのめ市」で印象的だったのは、みんな笑顔だったということだ。
お客と出展者のやりとり。
出展者と地元の人たちのやりとり。
休憩所でのお客同士のやり取り。
このやり取りが全部笑顔でつながっていた印象が強い。スタッフの人が道を走っていくときでさえ笑顔だった。

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なんだかあったかいなぁ。
そう思った。

その理由を知ったのは、前出したOwn GArment productsの代表でもあり、「ひのめ市」の代表も務める船木一人さんに後日お話を伺ったときだ。

「最初は”何か(のちのひのめ市)”をきっかけに来てくれたお客さんが船川に魅力を感じてくれないだろうか?という外へ発信しようという考えでした。しかしこのままだと他のイベントと変わらなくなってしまうというのに気づいたんです。
そこで内向きに向けたものにしていこうと変えていきました。
地域の人に向けた活動にしていったらいいのではないかと思ったんです。」


地域の仲間たちにクオリティの高いものに触れてもらい、いい影響を与え合う。
「ひのめ市」はお客さんだけではなく、地域そして出展者たちへも向けたイベントだったのだ。

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イベント終了後、お客さんや出展者・地元の方々からたくさんの「楽しかった!」という声をもらったという船木さん。
しかし、そこに胡坐をかかず何が楽しかったと感じてもらえたのだろうと考えを巡らせた。
「別にお祭りのように景品が当たったわけじゃないのにな、なんでそんなに楽しかったと言ってくれたんだろう、と考えました。そしたら、みつばちさん(イベント出展者)がブログに『遠いところから来てくれてありがとうね、男鹿にまた来てやってね』と地元の人に声をかけてもらったと書いてくれていたんです。僕もそれを聞いて本当にうれしかった。他にも、『こんなに美人でおしゃれな人たちが船川に集まってくるなんて!』と地元のおじいちゃんが言ってよ~などの話もあって、あぁそういうところなのかなと思いました。」
人との繋がりやあたたかい言葉のやり取り、交流があるイベントになっていたのだ。
私自身、何気ない笑顔のやり取りをあの日させてもらった。

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「これは僕たちが意図しては絶対できない。意図せず生まれてきたところですね。」
次またそれをやろうと思ったところで意図してはできないだろうな、と船木さんはなんだか嬉しそうに話していた。

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事前の予想をはるかに上回る人出があった「ひのめ市」。
大成功だったのでは?という質問に
「第一回目の7月12日のイベントのことだけを見ればそうなのかも知れません。
けど、これから若い人たちが地元におっと思ってくれるようになったときが本当の成功だと思っています。全然満足してないんです。まだまだ僕たちがやらなくてはいけないことははるか先にあるなと思います。」


そうだった。船木さんたちの目標や目的はイベントをやることではないのだ。
地元船川にふたたび光をあてること。
ひのめ市というイベントは、船川の魅力や現状を知ってもらう一つのツールなのだ。
Facebookには昔の船川についての投稿があり、こういった取り組みのひとつひとつが地元船川を知ってもらうツールなのだ。

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「基本的に男鹿っていうのは縮小傾向にあるので、みんなかなり悲観しているところがあるんですよ。
ひのめ市をやるにあたっても、中にはやったところで何も変わんねーべって言ってくる人もいた。」
その言葉にはぜんぜんひるまなかったという船木さん。
「男鹿は生きるということではとてもいいところなんですよ。」
こんなに仕事がないと言われ、人口が減って行ってるという男鹿だけれど生きていくことを豊かにして行っている人間がいっぱいいるんだよ、自然に囲まれて子供たちを育てながら、知恵を絞って、人間も助け合いながら、小さいコミュニティーの中でもやれることはあるんだ。と溢れるように力強く話してくれた。


「仕事なんて作るものなんだという発想で、若い子たちが定住を考えてくれる場所にしていこうというのが僕たちの最終的な目標なんです。僕たちの世代で何かが変わるとは思っていないんです。次の次の世代で『おじいちゃんたちなんかやってたな~』となにか感じてくれたら。」

もちろん外に出てみないと見えないところもあるんですけどね、と船木さんは話してくれた。

船川を、地元を愛するものとして自分たちにできることを。
船木さんたちは、それを一生懸命作り上げようとしている。


「なにか変化をもたらせたら。」と船木さん。


きっと、変化は起こるだろう。
しかしそれは船木さんたちが動くだけではできない。
足を運んだお客さんたちが、出店した人たちが、そして地元の人たちが、
感じたことを変化につなげていくのだ。


実際、福島さんが普段のイベントでは登場させないすき焼きコロッケをひのめ市で出品したところ、注文の電話が入るようになった。
またマザー食堂さんがイベントに合わせて作った初めてのしょっぱいグラノーラ「男鹿の塩ノーラ」は好評により定番メニューとなった。

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これからもミーティングを重ねて、今後どんなスパンで地域に根付いた「ひのめ市」にしていくのかを練っていくそうだ。


きっと、回を重ねるごとに楽しい仕掛けや仕組みを作ってくれるだろう。
それは、ミーティングに地元の若い子供たちにも早い段階で参加してもらいたいと話してくれる頼もしい一面と、取材途中に「ありの~ままの~♪」と歌いだしてくれるおちゃめな一面と「僕たち地元愛してるんです!」と声を大にして言う情熱たっぷりの一面を持つ船木さんから感じられた。

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実は今回も各店舗連携してのコラボ商品などいろいろと仕組みがあったのだが
想定を超えるお客様の数に仕組みが崩壊してしまったとか。

「是非またこんな船川ですけど、遊びに来てください。」
次回開催決定などの情報はひのめ市facebookにて。
Funakawa ひのめ市 facebookページ


nanokaでは今後も「ひのめ市」について追いかけていこうと思う。
更新の早いnanoka/akitaのtwitterも是非フォローして欲しい。
nanoka twitter


なんだかとっても、男鹿の船川が近く感じられる気がする。
そんな素敵な「ひのめ市」だったと思う。
また男鹿市船川にお出かけしてみよう。皆さんも是非。

written and photos by Ishiyama Haruka
photos by yumi

…[おわり]